ベトナムでの撮影許可について、日本の制作会社から最もよく聞かれるのがこの質問です。
「政府の許可は取れたんですよね。それで撮れますよね」
撮れません。正確には、それだけでは足りません。この記事は、その足りない部分の話です。
承認は二段階です
ベトナム外務省が外国メディアの取材を承認する。これが一段階目です。
そのうえで、実際に撮影する省・市の人民委員会が承認する。これが二段階目になります。ハノイで撮るならハノイ市、ダナンで撮るならダナン市、ホーチミンで撮るならホーチミン市。中央の承認は、地方の承認を自動的に含みません。
日本の感覚だと、国が許可を出したのだから地方は追認するだけだろう、と考えたくなります。ベトナムではそうなりません。それぞれが独立した判断をします。
地方のほうが、時間がかかることがあります
しかも、順番として地方が後になります。
中央の承認を得てから地方に出すため、地方の処理期間は中央の期間に上乗せされます。そして地方の処理速度は、省・市によって、また時期によって差があります。
「政府の許可が下りた」という連絡を受けた時点は、手続きの折り返し地点ではありません。まだ半分も来ていないことがあります。
複数の省をまたぐと、その数だけ増えます
ここが実務で最も重くなる箇所です。
ダナンとホイアンで撮る。ハノイとハロン湾で撮る。行政区分をまたぐと、承認先がその数だけ増えます。
企画書の段階では、地図上で近いから同じ扱いだろうと考えがちです。ロケ地を1か所増やすことが、承認先を1つ増やすことを意味する場合があります。ロケ地の候補を出す段階で、行政区分の切れ目を意識しておくと、後で日程が破綻しません。
現場で止められることもあります
書類が揃っていても、現場の担当者がその書類を知らない、ということが起こります。
このとき効くのは、書類そのものではありません。その場で誰に連絡できるかです。承認を出した部局の担当者と直接つながっているかどうかで、10分で解決するか、その日の撮影が飛ぶかが分かれます。
2023年の棋聖戦のときは、ハノイの担当課長の上役が、本番当日にみずからダナン入りしました。万一の際にダナン市の役人と直接交渉できるようにするためです。書類を整えることと、当日に動ける人を確保しておくことは、別の準備です。
発注する側が確認すべきこと
コーディネーターに依頼する場合、次の三点を聞いておくと、進行の確からしさが判断できます。
1. 中央と地方、どちらの承認まで完了しているか 「許可が下りました」の一言で済ませず、二つに分けて確認する。
2. 撮影地の行政区分がいくつにまたがるか ロケ地リストと承認先リストが対応しているか。
3. 当日、現場で止められたときに誰に連絡するか 名前が出てくるかどうかで、体制の実態が分かります。
これらは、企画の段階でお答えできる内容です。ロケ地の候補が出たら、行政区分の切れ目を先に確認しておくことをおすすめします。
許可全体の流れについては[ベトナムでの撮影許可、どこに何を出すのか]にまとめています。
ベトナムでの12年について、Kindleで一冊書いています。法人の設立と清算、政府との交渉について、より詳しく触れています。
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